継ぎはぎだらけの感情
目が覚めた。
次の瞬間、自分が飢(かつ)えていることに気付いた。
ただ、それだけを感じた。
それだけしか感じなかった。

キャンキャンと、なにやら甲高い、鳴き声のようなものが聞こえた。
声のするほうを見ると、小さな檻のなかに、
四つ足の小さな生き物が居た。
短い尻尾を懸命に振って、自分のほうを一心に見つめる、
小さな生き物。
その姿を見て、なにかを感じた。
ような気がした。

自分は飢えている。

だが、その小さな生き物が、自分の腹を満たすそれでないことは、
本能的に悟られた。

自分は飢えている。
餌を探しに行かなくては。
新鮮な獲物。
必要なものは、もう判っている。

強張って不如意な躰を起こし、よろめきながら立ち上がる。
何処へ行けば外に出られるかは、何故か、記憶にある。
玄関の扉に向かって、硬直した脚を引き摺る。

背後では、まだ、あの小さな生き物が鳴いている。
振り返って一瞥をくれると、小さな生き物は、
必死の形相で、さらに激しく甲高い声を上げた。
訴えかけるような瞳で、自分のことを一心に見つめて、
小さな生き物が、小さな檻のなかで、声を上げる。

その様に、再び、なにかを感じる。
今度は確かに。
なんだかよく解らないけれど。
あたたかい。なつかしい。

この生き物を、ここに残してはいけないように思えた。
踵を返し、たどたどしい足取りで、
小さな生き物の、小さな檻へと向かう。
慣れた手つきで(まるで流れるような手つきで)留め金を外し、
ぎこちない動作で小さな生き物を抱き上げる。
小さな生き物は、相変わらず甲高い声で鳴いている。
けれどその声は、先刻までとは違う色のように聞こえた。

小さな生き物が、自分の腕に抱かれて、せわしなく身動きしながら、
自分の唇を、頬を、顎を、その小さな舌で舐め回す。
あたたかい、なつかしい感触を、しっかりと感じた。
なんだかよく解らないけれど、自分は、この小さな生き物のことを、
ずっと昔から、よく知っているような気がした。

死んだはずの男は、未だ死んだまま生きながら、
小さな生き物を、その胸にしっかりと抱いて、
今度こそ、獲物を探しに、
出かけて行った。


                 退廃的な100のお題:鳥篭/お題配布場所



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愛犬家ゾンビ。
で、犬は人喰いチビ犬になっちゃうのか。
……それはそれで不憫。

もしも貴方がゾンビになったら、
貴方は自分の愛犬を、連れて行きたいですか?
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by zbeat | 2006-08-08 23:55 | リビングデッド、もしくはゾンビ
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