僕と一緒に堕ちて
僕の二の腕の肉がゾンビに喰い千切られたと見るや、
君は、そのゾンビの前に、颯爽と自分の腕を突き出した。
手首の内側が引き裂かれ、皮と、血管が垂れ下がる。
くっきりと、歯型の形に、肉が抉り取られている。
唖然とする僕の前で、君は、
まるで天使のように微笑った。

取り囲まれた僕たちは、かろうじて、
ほうほうの態でそれでも逃れ、
廃墟と化したアパートの一室へ辿り着いた。

僕の、
僕たちの体が、
死んでゆくのが判る。
墜落してゆくような、吸い込まれるような、眩暈。

僕は君の手をとって、荒れ果てた床に崩れ落ちた。
その拍子に、掌をガラスの破片が傷つけたが、
気味の悪いほど、痛みを感じなかった。

肉体が死んでゆく。魂も、死んでゆく。

君の腕が僕の体にまわされる。
翳みはじめた視界に映る君の貌は、
生気を無くして干からびて、唇はひび割れているけれど、
それでもなお、美しい。神々しい。

廃れた部屋で抱き合ったまま、身を横たえる。
落ちてゆく。どこまでも。
行き着くのは、地獄の底か。

このままふたり寄り添って、抱き合って、
僕たちは、最期のときを迎える。
次に目覚めるとき、僕も、君も、もう、僕と君ではないけれど。
とても、幸せな気分だ。

このままふたり寄り添って、抱き合って、ゾンビになろう。
次に目覚めたそのときも、ふたり抱き合っていると良い。

堕ちてゆく。
君とふたり。

視界の隅で捕らえた君の瞳もまた、僕を捕らえていた。

ああ。堕ちる。
僕と一緒に、何処までも、堕ちて……。


                 退廃的な100のお題:鳥篭/お題配布場所



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by zbeat | 2006-07-17 00:29 | リビングデッド、もしくはゾンビ
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