罅割れた剣で
掌中に在るのは、皆同じ罅(ひび)割れた剣なのだと、ふと悟った。
或る種、諦観の念を伴って。

つまるところ、皆、何れ滅び行くという事だ。

何時しか現れた人喰屍(ひとくいかばね)は、
圧倒的且つ絶望的な勢いを以ってして、地上に溢れ返った。
当然だ。
彼等は我々人を喰らい、食らわれた者達も又、人喰屍として蘇る。
其れを食い止める手段も、癒す術も、我々は持たない。
今や益体も無い人間達の殆どが死に絶え、或いは人喰屍となり、
地上は、唯人を喰らうだけの屍の手に落ちた。

人は、そう遠くない将来、皆滅びるだろう。
人喰屍になるか、彼等の腹に収まるか、其れとも、
(幸運にも)彼等の手に掛かる事なく息絶えるかして。
例え新たな生命が芽生え、生まれ落ちたとしても、
其れを守り通す事も、況して再び繁栄し、地上を人の手に戻す事も、
夢物語と言わずして何と言おう。

其れ程の所まで、もう、来てしまった。

けれど、此の地を手にし、我が物顔で彷徨い歩く人喰屍とて、
未来を持ち様の無い事に関して、我々と変わりが無い。
彼等がどれ程其の数を増そうと、所詮彼等は屍でしかない。
例え残された人の全てが人喰屍となり、
地上に彼等だけが残ったとしても、
所詮屍でしかない彼等が繁栄する事は無い。
只時の過ぎるに従い、朽ち、腐り、或いは干乾びて、
徐々に土へと還りながら、消え去るのみだ。
人類の滅亡よりは時間が掛かるかも知れないが、
何時かは、人喰屍とて、皆姿を消す。

我々にも彼等にも、未来など無い。
我々も彼等も、只、罅割れた剣を握り締め、死地へ赴く。
罅割れた剣でどれだけ抗おうと、其の先に勝機は無い。
束の間の勝利を得るとしても。
罅割れた剣は、やがて折れるだろう。
どちらの剣が先に折れるか、其れだけの差違でしかない。

だが其れでも、我々に較べれば、彼等の方が幸せだ。
彼等は、手にした其れが罅割れた剣である事も知らず、
其の剣が何れ折れる運命にある事も判らず、
遂に剣の折れる其の時でさえ、其れに気付く事は無い。

罅割れた剣で宿命に抗おうとする我々は、今、
其の罅割れた剣が、最早あまりに脆弱な物となっている事を承知し、
其の上で、其れでも、尚も剣を振るい続ける。
例え打ち破る事は出来ないと解っていようとも、
罅割れた剣を遺された望みと後生大事に握り締め、
胸に抱(いだ)いて眠りに落ちる。

望む事が、未だ赦されるならば。
どうか、我々に幸有れ。


                 退廃的な100のお題:鳥篭/お題配布場所



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by zbeat | 2006-06-14 21:24 | リビングデッド、もしくはゾンビ
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