この傷がある限り
実は私、昔、ゾンビに噛まれたの。
ほら、ここに傷があるでしょう。

だけど、どういうわけだか知らないけれど、
私はゾンビにならずにすんだ。
本当に、どうしてだかは判らない。

けれど、とにかく私は、いわゆるゾンビにはならなかったの。
いつそのときが来るのかと、それはもう、
心底怖くて恐ろしくてたまらなかった。

でも、1日が過ぎ、1週間が過ぎ、やがて1ヶ月が過ぎ。
とうとう1年が過ぎても、私はゾンビにならなかった。

あれから何年も経ったけれど、今だって、
この傷さえなければ、いいえ、この傷があっても、
ゾンビに噛まれたなんて、とても信じられないでしょう?
私だって、信じられない。


……だけど、ひとつだけ、変わったことがあるの。


それはね、ときどき、無性に人間が食べたくて、
たまらなくなること。
今、目の前にいるあなたのことも、
実を言うと、美味しそうに見えて仕方がないの。


そんな顔をしないで。
あなたのことを捕って喰いはしないから。
すくなくとも、今は。
……でも、私には近づかないほうが身のためかもね。
いつかそのうち、我慢できなくなるでしょうから。

つまるところ、いわゆるゾンビにはならなかったけれど、
やっぱり私はゾンビの一種なのね。

この傷を見て、私はそれを思い出して、
自分を戒めるの。
やつらのようには、なりたくないから。

いつか、たがが外れる日が来るかもしれない。
そうなって欲しくないような、そうなって欲しいような、
なんとも複雑な心境だわ。
今のこれはこれで、辛いものがあるから。

けれど、この傷がある限り、少なくとも、
私は、私がそうだってことを、忘れないよう努力する。


……つもり。


                 退廃的な100のお題:鳥篭/お題配布場所



人気blogランキング
[PR]
by zbeat | 2006-05-01 03:16 | リビングデッド、もしくはゾンビ
<< 手を伸ばし、声を張り上げても 哀しいうたを、どうか >>