哀しいうたを、どうか
最期になにを望むかと問われて。
僕は暫し思考した。
僕自身、なにが望みなのか、よく解らなくて。

僕が人間でいられる時間は、もう、そう長くはない。
あと数時間後か、もしかすると数十分後には、
僕は死んで、また蘇る。
僕ではないモノとして。

それまでの、最期の時間に、僕が望むもの。

僕が好きなものを、僕が好きだったものを、
心のなかで、ひとつひとつ、数え上げてみるけれど、
どれもしっくりこない。

それにどうせ、僕には想い出など残らない。
僕が死んで、僕ではないモノのして蘇ったときには、
最期の時間のことなど、覚えてはいない。
なにかを願うなど、無駄なことだ。

それでも、最期になにを望むかと問うてくれた、
この優しい友の為に、なにか、ひとつでも、
僕の望みを応えなければ。
……なんて、本末転倒だけれど。


そういえば、僕は、あのうたが好きだった。
人生に疲れ果てて、心を何処かに漂わせている風な男を唄った、
あの、哀しいけれど、それでも幸せそうなうた。
幸せでありつつも、それでいて、やっぱり哀しい、あのうた。

A simple man with memories of
those long lost golden days
I close my eyes and slowly driftaway

なんだ。
僕にぴったりじゃないか。
今僕は、もう決して戻ることのできない、
抱(いだ)き続けることさえ許されない、
過ぎ去った素敵な想い出を懐かしんで、
そう、漂い、彷徨っている。

だから僕は、友に向けて言った。
あのうたが聴きたいんだ、と。
あの、哀しいうたを、どうか。


                 退廃的な100のお題:鳥篭/お題配布場所



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by zbeat | 2006-04-28 19:04 | リビングデッド、もしくはゾンビ
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