切り裂くのも私の仕事
ねえ、ちょっと、聞いてよ。

あんたたち人間は、あたしたちゾンビのことを、
ただ食欲だとか本能だとかの塊で、
のろまだの頭が悪いだの言うけどさ。

実のところ、あたしたちの頭はちゃんと働いてて、
物を考えることも、感じることもできるだ。
こんな風にね。
ただ、あんたたちみたいに、自分が望むように
動いたり、喋ったりできないだけ。
……こんな風にね。

あたりまえじゃないか。
あたしたちだって、元はあんたたちと同じ、
人間だったんだからさ。
よく言うじゃないか。
「人を見かけで判断しちゃいけないよ」って。

解るかな。
ある朝目が覚めたら、体は硬直して思いどおりに動かないし、
舌もすっかり麻痺して上手く喋れない、
そんな感じ。
脳卒中かなんかにでもなったみたいなさ。

あんたたち、そういう人間が襲いかかってきたら、殺すかい?
……殺さないよね。
そういうことを言ってんの。
まあ、そういう人たちは、あたしたちと違って、
人間を喰ったりはしないけどさ。

でもしょうがないじゃない。
あたしたちだって、お腹は空くの。
で、あんたたち人間は、
世界中のいろんなものを食べられるけど、
あたしたちゾンビが食べられるものと言ったら、
悲しいかな、元は同族だってのに、
あんたたち人間だけ。

どうしようもないじゃない。
そういう存在になっちゃったんだから。
気がついたらあたしたちはゾンビになってて、
そしてお腹が空いてたの。
その瞬間、どういうわけか判ったのよね。
あたしたちに必要なのは、新鮮な人間の肉だって。

だからあたしたちゾンビは、あんたたち人間を捕まえて、
この手で引き裂いて、切り裂いて、喰うしかないってわけ。
あんたたちだって、家畜を殺すでしょ?
それと同じことよ。
あたしたちが生きていくために、
食事にありつくために必要な、一仕事。
生の営み。
これも食物連鎖ってやつ?

まあ、そう言ったって、あんたたち人間に、
あたしたちゾンビの気持ちが解るわけないよね。
最初(はな)っからあたしたちのこと見下して、
理解しようって気はありゃしないんだから。
あんたたちに言わせれば、あたしたちは、
所詮、化け物に過ぎないってね。

それもまあ、致し方のないことなわけよね。
もしも、あたしたちゾンビが、あんたたち人間と同じように、
自由に動けて、話ができたとしたって、
(あたしたちがそれほどそれを望んでることか!)
やっぱり理解してくれないんでしょ。
あたしたちがゾンビってものになっちゃった以上は、
もう、絶対に、あんたたちと相容れることなんてないんだ。
あたしたちだって、元は人間だったんだもの。
そんなこと、解ってるよ。

それでもね、愚痴のひとつも言いたくなるわけよ。
こうも酷い言われように、扱いようじゃあさ。
なんていうかさぁ、もうちょっとこう、
あたしたちのこ


顔を歪め、唸り声を上げながら歩くゾンビの頭は、
散弾銃で跡形も無く吹き飛ばされた。


                 退廃的な100のお題:鳥篭/お題配布場所



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by zbeat | 2006-03-09 20:59 | リビングデッド、もしくはゾンビ
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