このまま力を加えれば、
人差し指に、あとほんの少しだけ、
力を入れていれば、力が入っていれば、
救えた命もあったかもしれないのに。

あれはもう、人間ではないと解ってはいるのに、
僕にはどうしても、奴らを撃つことができない。
理由は単純。
もう人間ではないけど、人間の姿をしているからだ。
銃を撃ったことはあったけど、でも、
人に向けて撃ったことなんかなかった。
あたりまえだけど。
というか、そもそも、僕が撃ったことがあるのは、ライフル。
ピストルで、しかも至近距離から、
人間(の姿をしたモノ)に向かって銃を撃つことになるなんて、
夢にも思わなかった。

そんなわけで、この世がまさに、僕の大好きな
ゾンビ映画の世界になってしまった今。
僕は、大好きなゾンビ映画の主人公たちのようには、
銃を撃つことができずにいる。
お陰で、もう何人か、見殺しにしてしまった。

撃鉄を上げて、狙いを定めて、あとは引き金を引くだけなのに。
あとほんの少し、人差し指に力を加えればいいだけなのに、
そこで、僕は、尻尾を巻いて逃げ出す。
不幸中の幸いというやつで、僕はゾンビ映画が大好きだったから、
小ざかしく立ち回って、それでもどうにかこうにか、
やってきてるわけだけど。
やっぱり、このままじゃ、生き残るなんて無理だ。
それは解ってる。

解ってるけど、どうしても、僕は、引き金を引けない。
このまま人差し指に力を入れて、引き金を引けば、
撃ち出された弾丸が、ゾンビの頭を吹っ飛ばしてくれるって、
解ってるのに。
あれはもう、人間じゃないと、解ってるのに。

あと、ほんの少しだけ。
このまま力を加えれば、それだけなのに。

僕はまだ、引き金を引けない。


                 退廃的な100のお題:鳥篭/お題配布場所



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by zbeat | 2006-02-24 23:04 | リビングデッド、もしくはゾンビ
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