霞がかった夢のあと
人々が、ゾンビとか言う生ける屍たちを、
どうにか駆逐してから、何年か経った。
復興には思いのほか時間がかかり、
まだ何もかもが以前と同じ、とはいかないが、
それでも、ゾンビの影に怯えることなく生きられる、
この当たり前の世界が再び戻ってきたことを、
私は嬉しく思っている。

それにしても。
あれはいったい何だったのだろう。
あのゾンビたちは、どこから来て、どこへ行ったのか。
表向き、……というか、実際ある程度はそうなのだろうが、
私たち人間は、彼らと戦い、滅ぼし、そして、
勝利を収めたことになっている。

けれども、あれほどの勢いで増殖し続けた彼らを、
いったいどうやって一掃することができたのか。
再び平穏な世の中が訪れた今になって、
あらためて考えると、不思議としか言いようがない。

ゾンビと呼ばれた、あの生ける屍たちがいなくなって、
そう、何年か経ったのだけれども、
まだ何年かしか経っていないのに、
人々は、あれはまるでただの悪い夢だったかのように振舞っている。
目が覚めると、途端に思い出せなくなる類の、
ぼんやりとした悪夢。

いや、正直なところ、私自身、
当時のことは、あまりよく覚えていない。
なんだか頭のなかに霞でもかかったように、
うっすらと、ほんのりした恐怖の記憶があるだけで、
私がいったいどうしていたのか、
どうやって生き残ることができたのか、
それわえも、はっきりとは分からない。

ただ、私に言えることは、人々を脅かす、
あの恐ろしいゾンビたちは、もう、
みんないなくなったということだけ。

まあ、でも……悪い夢なんて……、
忘れてしまったほうがいいに決まっている。
なにはともあれ、すべては終わったのだから。
こうしてまた、無事に過ごせる日々が訪れたのだから。
それを、神に感謝しよう。

そう思いながら、私は目を閉じた。


何か、幸せな夢を見ていたような気がした。


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by zbeat | 2006-02-21 18:32 | リビングデッド、もしくはゾンビ
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