愛しさはいつまでも私を苦しめる
あれで良かったのかと、今でも思う。
ではいった、どうすれば良かったのか、
それは今でも判らないけれど。
あれで良かったのかと、今でも思う。

あのとき私は、迫り来るあなたではなくなったあなたに向けて、
銃を放った。
あなたではなくなったあなたには、
もう、私のことなど判りもしなkったろうし、
私にしても、あなたではなくなったあなたに
喰い殺されるのは嫌だった。
だから私は、あなたを殺した。
いや、もう死んでいたのだから、殺したわけではないかもしれない。
……そう、あなたではなくなったあなたの、
おぞましい営みを、終わらせた。

その瞬間、私は考えた。
私は、あなただったあなたが望んだであろうことをしたのだと。
私は正しいことをしたのだと。

けれど、すぐに私は、後悔したのだ。

たしかに私は、あなたではなくなったあなたに
喰い殺されたりはしたくなかったけれど、
あなたがあなたではなくなっても、やはり、
愛してはいたのだ。愛しかったのだ。

だから、あなたではなくなったあなたというゾンビを
この手で撃ち殺してから、私の心には、
ぽっかりと大きな穴が開いたままだ。
あなたのことを、だれよりも愛しく思っていた。
それだから殺したとも、それなのに殺したとも、
私には、言い切ることができない。
それもまた、私を苛(さいな)む。

私は今のところ、まだ生き延びている。
いつまで生き延びていられるのか、
いつまで生き延びることになるのか、
いつまで生き延びなければならないのか、
それは判らない。判りたいとも思わない。
ただ、私が私として生き続けている限り、
いつまでも、それは私を苦しめるのだ。
愛しいあなたではなくなった、
けれど、愛しいあなたのままだったあなたを、
この手で殺めた、そのことが。

もしも私が、私ではなくなった私という、
あなたではなくなったあなたと同じゾンビになったら、
私だった私のしたことが、
正しかったのか、間違っていたのか、判るだろうか。

愛しいあなたではなくなった、
けれど、愛しいあなたのままだったあなたの幻影が、
今なお、愛しさをいっそう掻き立てて、
それが、私を苦しめる。


                 退廃的な100のお題:鳥篭/お題配布場所



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by zbeat | 2006-02-15 23:45 | リビングデッド、もしくはゾンビ
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